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言語教育に潜む人種差別と貧困の連鎖(SDGs 1, 4, 10)

更新日:2022年3月10日

Keywords: #教育格差 #言語政策 #黒人英語 #Ebonics #貧困 #人種差別


4 質の高い教育をみんなに


私たちはSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」の達成に向け、「言語政策による教育格差が生む貧困スパイラル」に関して、先生と共にディスカッションの時間を持った。特に黒人英語(Ebonics)を例に挙げながら、過去の事例から現在に至る歴史的背景について学び、今も残る「教育による人種差別」について理解を深めた上で、私たち日本人には何ができるのかについて議論を展開した。




➢ 差別的な言語教育から生じる貧困のスパイラル


 17世紀初頭以降、アフリカ大陸からアメリカに連れてこられた奴隷たちは「母語の使用」や「母語を子どもに教える」行為を禁止され、奴隷解放後も「強制無知法」や一連のJim Crow法が1960年代まで施行され、母語と耳から聞いただけで覚えた英語が複合化された黒人英語(Ebonics)が生まれた。それは、奴隷解放後も北部に大量に移住した黒人達の住むゲットーと呼ばれる貧困者居住区で維持された。平等な言語(英語)教育を受けられなかった人々が、試験等で不利な立場に追いやられ、良質な職に就くことが出来ず、次世代を育てる環境が作れない。このような経済・教育格差を軸とした貧困のスパイラルに陥ってしまっている人々が少なくないのがアメリカの現状である。


教育格差是正へ、アメリカ政府の挑戦はつづく


 トランプ政権に限らず、アメリカ政府は教育による人種差別問題を是正しようと努力を重ねてきたが、十分な結果を得ていない。二言語使用教育法は「落ちこぼれゼロ法(No Child Left Behind)」に変わるなど、第43代ブッシュ大統領から引き継いだオバマ前大統領が改革を推進していたが、2018年時点でも大幅に教育格差が改善されることはなかった。



言語


➢ 教育による人種差別は日本人も考えるべき問題


 日本においても「教育格差による貧困スパイラル」は確実に起きている。また、日系ブラジル人をはじめとした外国籍の子どもたちに対する言語教育は自治体レベルに任され、政府の包括的な対策には未だ不備がある。日本の学生はこのような言語政策や人種差別に対する理解が乏しい傾向にある。今でこそ、Black Lives Matterなどにより人種差別への批判は大きく取り上げられているが、「目に見えない''教育''による人種差別」の理解と問題意識はさらに高めていく必要がある。


恵まれた環境を自覚し、多様性を受け入れる


 自らが恵まれた環境で育ったことを自覚し、多様性を受け入れる素地を作ることが、この問題に対する根本的な理解の促進に繋がる。そのためにまずはこの問題を知った私たち自身が周囲の人たちや、小・中学校へのボランティアなどを通して、多くの人に伝えていくべきである。また、問題解決のための具体的なプロジェクトを立ち上げるために、さらなる議論の場を持ちたいと思う。

 

【学生の声】


学生1:

 黒人への暴力、偏見など、報道番組で放映される黒人への差別については氷山の一角に過ぎないことを知ることができました。また言語教育が不十分であるから、規定の学力に達することができず、将来に対して考えることが難しい現状であることを理解することができました。少しずつでも差別意識が薄れ、人類全体が教育を受ける機会が与えられるように、活動していきたいと思います。


学生2:

 「人種差別は教育による見えない差別によっても起きている」という事実が強く印象に残りました。そして、言語政策は教育において根本に位置しているにも関わらず、日本では学ぶ機会が少ないことに問題意識を持ちました。また、日本人としての価値観のみで世界の問題に目を向けていた自分を省みる時間にもなりました。


【まとめ】


 私たち日本人にとって、当事者意識の低い「人種差別問題」。中でも注目されていない「教育政策による目に見えない差別」によって多くの人々が苦痛を感じている。SDGsが掲げる「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「人や国の不平等をなくそう」といった目標達成に向けて、解決すべき重要な問題である。そして、教育制度とは簡単に変えられるものではないが、私たち自身が周囲へ伝えることから始めれば、必ず解決への糸口が見出せると私たちは考える。

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