30億人が抱える栄養問題 農業の生物多様性を保全する(SDGs 2, 15)
更新日:2022年3月10日
Keywords: #ケニア #食糧危機 #農業生物多様性 #栄養障害 #健康問題 #生物多様性

今回はSDGs 目標2「飢餓をゼロに」と目標15「陸の豊かさも守ろう」に関連する遺伝子・生態系の保全について、先生が実際に行っているケニアでのプロジェクトの内容を含めてお話頂き、話し合いの時間を持った。
➢ 農地拡大によっては食糧危機を避けることができない
現在、世界の人口77億人を養う食料は生産されているが、約8億人の人々が飢餓に苦しんでいる。このことは、食料は不足しているのではなく、先進国の食料は十分なのに途上国では食料が足りないという分配に問題があることを示している。また、今後はこれまで以上に地球上の農地面積が増えることはないと予想されている。なぜならば、これ以上の農地拡大による森林破壊は甚大な環境破壊に繋がるからだ。世界の人口が今も増え続けていることを考えると、食糧不足による食糧危機を避けることはできないであろう。
➢ 農業生物多様性の保全が健康問題の解決策
近年では栄養障害という健康問題も増加している。栄養障害とは飢餓や肥満、ビタミン不足など、食生活がうまくいっていないことにより生じる問題である(世界人口のうち、8億人が飢餓、21億人が肥満、20億人がビタミン不足の状態に陥っていると言われている)。この問題の原因の一つとして、作物の種類の画一化が挙げられる。約1万年前に農耕が始まって以来、人類は5000種類以上の食物を食べてきたが、現在では12種の作物と5種の家畜が全摂取エネルギーの75%を占めるようになった。このような状況に対して、農業生物多様性を重視する動きが生じてきている。これは農業における多様性を保全し、作物の多様化を目指して食生活を改善しようする考えに依るものである。農業多様性を保全することで栄養改善はもちろんのこと、農業基盤の強化、病害虫の抑制、生態系の維持などが見込まれ、大きな注目を集めている。

➢ ケニアでの栄養改善プロジェクト
先生の携わっているプロジェクトでは、3年前からケニアの農村地域に入り地元住民の家庭の食事を記録、開発したアプリケーションから栄養状態を評価し、栄養改善を行うという取り組みをしている。アプリケーションを用いて栄養状態を数値化する中で、どの栄養素が不足しているのかを詳細に知ることができるということをお話ししていただいた。
【学生の声】
学生1:
将来起こる食糧不足及び現在も起こっている栄養障害を解決するために、アフリカの伝統的な作物に着目するということが、まず自分では考えもしなかった内容でありました。また、そもそも現在は食糧が不足しているのではなく、栄養が偏っていることが問題であることも知らなかったのですごく勉強になりました。文化、考え方の違い、食習慣を変える難しさなど、課題が多い中で、それでも改善していこうと失敗を恐れずに様々な方法でアプローチしていると知って、その姿勢が本当に素晴らしいですし、見習っていきたいと思いました。
学生2:
私が大学で勉強している専門とは異なる分野でしたが、食物多様性の保全問題への関心と理解を深めるとても良い機会になりました。日本における伝統的な野菜、ブランド野菜というものを意識しながら、多様性、食物の伝統のために関心を持ち、実際に買うなどして動いていきたいと思いました。また、言語や文化の壁がありながらも、地域の人々のために研究、フィールドワークをする姿に感銘を受けました。私ももっと世界のことに関心をもって、グローバルに生きていきたいと思いました。
【まとめ】
今回参加した学生は農業分野を専門とする学生が少なかったが、先生の分かりやすい説明を通して、一人一人が農業生物多様性の保全という分野について興味・関心を高めることのできる良い機会となった。
実際に先生が行っているケニアでのプロジェクトの内容を聞き、現地の人の食習慣の改善には時間を要しながらも、変わらずに向き合って栄養改善活動を進めていく姿に多くのメンバーが感動していた。
最後に、先生から若い時に沢山海外に行ったら良いとアドバイスをいただき、一人ひとりがグローバルな視点を持つことの重要性を理解する時間となった。