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正しく見ることの大切さ

更新日:2022年3月10日

Keywords : #本質 #物性 #八正道 #正見 #好奇心 #貢献心 #責任感 #内発的モチベーション #感動する力 #プロセス #才能 #情けは人のためならず


正しく見る


Theme


私たちは応用物理(X線・放射光)を専門としておられる先生より、「物事を正しく見ることの大切さ」というテーマのもと、学生からの質疑応答の時間を持った。SDGsが目指すような社会問題を解決するためには、問題の本質を見抜くことが必要不可欠となる。当ディスカッショングループでは全員が理系メンバーであったこともあり、研究者として長年活躍された先生から提示いただいた観点は、今後の学業や研究活動、さらには人生そのものに対しても非常に勉強となるものであった。


 

Discussion

「物事を正しく見る」とは

全く異なる性質を持つ黒鉛とダイヤモンドが、炭素という同じ原子から成り立っているように、同じ材料であったとしてもその構造が異なれば、「物性」は異なる。科学技術においても、例えば、摩擦が強くなる場合と弱くなる場合がある一見矛盾する性質を持つゴムの開発が行われている。科学に限らず、多面性のある物事に対しては、正しく見ることができなければ、正しき議論を行うことはできない。SDGsで取り組もうとしている社会問題の解決も同じである。一つの方法で短期間に解決される問題ではなく、長期的に取り組むものであり、個別の問題ではなく、複合的問題である。


仏教には人間が正しく生きて悟りを開くための道を説いた、八正道という教えがあるが、その第一番目が「正見(ただしく見ること)」である。正しく見ることが出発点であり、そこから考えることが始まる。研究においても仕事においてもそうであり、それが生き様となる。


正しく見るための努力と「好奇心」

物事を正しく見るためには努力が必要である。角度を変えたり、人の意見を聞いたりすることも大切である。また、努力するためには好奇心を磨くことが重要となる。好奇心なしに生きることは地獄である。人間には目と耳と鼻と口と手がある。物事を感覚する機能が備わっているのであるが、この五感を単に生存のためのものと消極的に扱うだけではもったいない。いかに目で見て、耳で聞いて、好奇心を持って楽しむかが重要である。学生においても、社会人となっても好奇心を磨いてほしい。そのためには自己管理が必要である。


常識を破るために ~広い問題意識と突き詰めた専門性~

常識を破るには自分が知らないことを恐れない姿勢が大切である。知ったかぶりしてしまえば、何が常識かも分からない。本当に為したいことであるならば、恥ずかしがらずに聞くことが重要である。また、早急に成果を求めず日々成長していくこと、友達を大切にして身の回りのネットワークを広げ、長期的に見ることが大切である。また、専門は磨くべきである。中途半端に知っているだけでは力にならない。幅広く物事を見ようという心の姿勢を持ちながらも、一つのことを突き詰めることが大切である。このバランスを良くしていくべきである。


貢献心に代わる責任感

これまでの科学歴史において、帰納法(Induction)と演繹法(deduction)が多く使われたが、もう一つの推論方法として、仮説推論(abduction)がある。仮説推論にはひらめきや直観も必要であり、研究活動の際には、脳を空にする時間も大切となる。


社会貢献の始まりは周りの人を大切にすることである。そして、チームに対して責任を持つことである。SDGsも将来の地球に対する責任を持つことである。貢献したいという言葉の裏には、自分が認められたいという思いがある。責任感という言葉にはそのような思いはあまりない。だからこそ、成果が出なくとも簡単には諦めないだろう。ちょっとした心の構え方で、持続可能なモチベーションを生み出すことができる。


内発的な動機を持つ

大学の勉強や研究を行ううえでは、外発的ではなく、内発的モチベーションが重要である。自立するためには自分の中から生じる動機を持つことが大切である。どんな人であっても、見たい、聞きたい、知りたいという気持ちが自分の中にあることに気づくであろう。大学に入ってからのモチベーションの維持は人生通してのモチベーションの維持となる。また、社会に役立ちたいという使命感があるはずである。大きなことができなくとも、小さなところから実践していく。まずは身近な人を大切にすることであり、自分は大切な存在であることを自覚することである。自虐的になる人は社会貢献できない。価値ある自分を自覚し、そこから周りの人も大切な一人であるという普遍性を実感する。そして世の中のために何かしたいという思いに至る。もう一つは感じる力、感動する力を磨くこと。些細なことでもいいので、感動する。それは感謝する人である。感謝できる人は得である。同じ研究をしていてもどれほどワクワクして、感動できるか。それも心がけしだいである。


知識よりもプロセスを大切に

研究で学んでほしいのは知識その物よりも、物事の考え方である。ある目的、目標を立てて、そこにどのようにしてアプローチしていくか。そして、人にどう伝えていくか。目的を達成するにはどのようにすべきかを皆で議論する。そのために必要な知識を持つ。得た知識その物を絶対視してはいけない。それではいつも同じ分野に籠もってしまう。知識は陳腐化していく。どのようにしてある目的にアプローチしていったかということが重要である。そこで苦しむことも、将来的には力となる。登山をしても、降りてくれば差分はゼロである。高く登ることだけではなく、そのプロセスにも意味がある。プロセスを楽しむことができるようになるといい。


才能を何かに役立てたいと思えば挫折しない

これをすればすべてが解決という物はない。全体像を見ることが大切である。人生の選択に際しても、これが一番という選択肢はないと思った方がいい。どの方向性に向かうのかは決めるが、シャープに一個だけに定めるということはやめた方がいい。360度漠然としているのはよくないが、絞りすぎることも良くない。努力はしたけど、うまくはいかないということは非常に多い。リベンジの連続である。ほとんどの人は自分には才能がないと思っているが、努力することも才能である。才能だけでは限界が来る。才能が何かの役に立てばいいと思うと挫折しない。「情けは人のためならず」人のためにすることは結局自分が一番得をするようになる。自分のためにしようとすると挫折する。社会貢献しようというのも結局自分が一番得をしているということ。なぜなら自分の心が喜ぶからである。


 

Students' View


学生1:

 研究内容だけでなく、研究という行為自体にも目的意識をもって取り組むと良いというアドバイスが印象的でした。様々な考え方を学べることに意義や楽しみを見出し、残りの研究生活をもっと主体的に取り組んでいこうと思います。


学生2:

 今回、先生には生きていく上での心がけを学ばせていただきました。どんな苦労も楽しんでゆく中で、苦労が苦労でなくなるのだなと感じました。まず私の心が幸福を感じていけるように普段から自己管理をしっかりしていきたいと感じました。


 

Conclusion

 

物事を正しく見て、モチベーションを持続可能に発揮するために、好奇心、責任感、感動する力という三点の大切にすべきことを挙げていただいた。すなわち、SDGsに掲げられるような究極の社会貢献をしていくということは、私たちに備わる感性を引き上げ、推進力を与えてくれることに気づく。一つのことに着目するだけではなく、大きな視点を抱き、人生を通して様々な社会課題解決に挑戦してほしい。

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