途上国でのごみ処理法を現地に根ざして考える
更新日:2022年3月31日
Keywords : #JICA #埼玉大学 #開発途上国支援 #JST #SATREPS #生活ゴミ #産業廃棄物

Theme
私たちは、JICA(国際協力機構)や埼玉大学が行う開発途上国支援業務、特にJICAとJST(科学技術振興機構)が共同で実施しているSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)の提案型事業において、先生がスリランカとベトナムで実際に廃棄物関連事業に携わってきた体験を伺いながら、廃棄物問題について考えた。廃棄物は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」をはじめとし、他にも目標3,9,14,15など、多くの目標に直接的、間接的に関わりを持つ。議論のテーマは「生活ごみ、産業廃棄物の取り扱いでそれぞれ注意すべきことは何か」「開発途上国の体制は未だ弱体と考えられる。どのような点が問題として挙げられるか」の二点であった。
Discussion
廃棄物の分別の効果や必要性を自分の頭で考えていく
一つ目の議題「生活ごみ、産業廃棄物の取り扱いでそれぞれ注意すべきことは何か」に対する多くの学生の意見は、「よく分別する、処理の方法や場所などのサイクルの構築をする」というものだった。それに対して、先生は「なぜ身の回りで分別などをすることが必要なのか、またどうすればやり方を改良できるか、そのことによる効果はどんなことが期待できるか、色々と自分の頭で考えていくことが大事だ」と仰った。
開発途上国の廃棄物処理体制が弱体である理由
二つ目の議題「開発途上国の体制は未だ弱体と考えられる。どのような点が問題として挙げられるか」に対して、参加学生からは次のような意見が出た。「先進国は豊かだからこそ環境に配慮できる部分もあるが、貧困国では、そもそも貧困ゆえに環境へ配慮するほど精神的に余裕がないのではないか。また、環境に資するインフラは貧困国では基本儲けが出ないことが多く、また技術も不足しているのでやろうとする人が現れない。公共事業化、もしくは外国からの投資を伴った民間企業化が必要ではないか。」先生からは、実際に開発途上国で事業を進めていた頃に直面した課題として、大きく5つの点を挙げて下さった。
中央政府や自治体においてごみ処理に関する法整備がなされていない
行政府の人員・資金に制約があり、技術力も不足している
ごみ問題の動向を示す情報収集や体制が脆弱である
民間のごみ取り扱い業者が未成熟である
住民、行政を含めた国民レベルでのごみ問題解決に向けた啓蒙活動の不足
これらが現実として問題となっているというのだ。
現地の人々と交流し、現実的な協力方法を探ることが大切
ディスカッションの最後に、先生は「先進国のやり方をただ押し付けようとするのではなく、まず現地の人々との交流を進める中で現地に対する理解を深め、それをもとにより現地に合う現実的な協力方法を模索していくことが鍵になる」と語って下さった。
Students' View
学生1:
貧困の問題や格差の問題について、国際開発や開発援助の授業で学んだことがあったため、問題解決策の優先順位のつけ方に興味と疑問を持っていた。今回のテーマはごみ問題だったため、スリランカのごみ問題における一番優先すべき事項について先生に質問させていただいた。パートナーシップや連携をとること、行政機関と住民、その中でも特にリーダーと理解を深めることが大切だと知ることができて、有意義な時間だった。
学生2:
先生が最後におっしゃっていた、「全く違う場所で生活している人も同じ人間」という言葉がとても心に残った。日本にいると、途上国などの他の地域を考えるときに、全く別の物事や人を扱っているように感じる時がある。しかし、人の本質は同じで、前提として「分かり合える」という確信を持っていくことが一番大切なことだと思ったし、だからこそSDGsの17番にもある、パートナーシップを作っていくことが大切だと感じた。
Conclusion
ローカルな視点から、身の回りでゴミを減らそうとしたり、分別を意識したりすることが、グローバルに見たときには、遠い国の開発途上国における廃棄物の問題解決に繋がるかもしれない。先生の言葉を借りると、1年、2年では成果が出てこないことも、5年、10年と続けていくと次第に成果が見えてくる。そのためにも一過性の取り組みではなく、息の長い「持続的」な取り組みが大切であるのだ。